PSVITA対応の国産ゲームエンジンが登場~「ゲームグラフィックス2011」が発売となりました

 ゲームグラフィックス2011・CGWORLD特別編集版の執筆に参加いたしました。

 ワークスコーポレーションのCGWORLD誌の過去1年間に掲載された記事のうちのゲームグラフィックスにまつわる内容を再編した年刊誌ですが、ページの都合でカットされた内容なども盛り込まれているようです。

 収録された各タイトルのゲームグラフィックス解説本編のほうにはボクは関わっていませんが、この中に収録された国産ゲームエンジン「OROCHI」にまつわる記事作成を行いました。



 「OROCHI」はシリコンスタジオがリリースした国産のオールインワン型のゲームエンジンで、DirectX11ベースのWindows PCはもちろん、PS3,Xbox360といった現行機、PSVITAなどの携帯ゲーム機にまで対応しています。

 Unreal Engine3(UE3)やCRYENGINE3(CE3)とは違い、大きなフレームワークは用意されるものの、プログラムモジュールはプログラマ自身が開発し、アーティストは多彩なツール群を用いてフレームワークの中でコンテンツを作り込んでいくようなスタイルのエンジンです。

 記事は、OROCHIのアーキテクトである新井タヒル氏とのインタビュースタイルで構成しており、オンライン版がCGWORLD.JPで読むことが出来ます。

orochi_a01_pu.jpg
国産ゲームエンジン「OROCHI」の魅力
http://cgworld.jp/feature/interview/siliconstudio-orochi.html

 OROCHIは、UE3やCE3のような高級版ツクール的な設計とせず、あくまでゲームのロジック的な開発部分はプログラマが自由に開発できるようになっています。

 これは、ゲームエンジン側の仕様でゲームのポテンシャルが制限されてしまうことを嫌う日本のゲーム開発シーンに合わせて、プログラマに適度な自由度を与えたかったためのようです。日本のゲーム開発では「効率」よりも「職人的な作り込み」の方を優先する傾向にありますからね。

 とはいえ、オールインワン型ゲームエンジンなので、「効率」もその仕様の中で最大限得られるようになっています。

orochi_c02_pu.jpg

 たとえばグラフィックスエンジンは各プラットフォームの違いを吸収できる設計になっています。たとえばシェーダ開発では、プログラマがOROCHI規則にしたがって書けば、全プラットフォームで共通の質感を再現するシェーダにメイクされます。

 プログラマが追加したシェーダモジュールをマテリアルデザインツールに追加すれば、アーティストは標準シェーダセットにない質感の表現も作り込めます。ただ、UE3やCE3のようなアーティストが新規シェーダを作るようなビジュアルツールはないわけです。プログラマが機能を追加し、アーティストはその機能を使って「職人的な作り込み」を行う事になります。

 前述したようにOROCHIは既にPSVITAへの対応を一通り完了しており、下記のようなテストショットが公開されています。



orochi_b02_pu_win.jpg
Windowsでのレンダリング結果


orochi_b01_pu_vita.jpg
PSVITAでのレンダリング結果



 ポストプロセスエンジンにはシリコンスタジオが誇る「YEBIS」のフルスペック版が採用されていますし、パーティクルエフェクトツールにはこれまたシリコンスタジオの看板ツール「BISHAMON」フルスペック版が付いてきます。

 実は、OROCHIに関しては、3月に先行的に独占取材をしていました。

 この時点ではポストプロセスエンジンやパーティクルツールは独自のものが提供されるという説明だったのですが、この半年でシリコンスタジオの本気度が変わったようです。

 OROCHIプロジェクトは、シリコンスタジオとして相当気合いを入れて取り組んでいると言うことなんでしょう。

 ちなみに、既に採用タイトルの開発が進行しているとのことですが、それについては「その時期」が来たときにフォローしたいと思っています。

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