西川善司のGDC2011レポート(1)

 先週土曜日のIGDA主催のGDC2011報告会での講演を終わって、やっとGDC2011が一段落したという感じです。

 GDC2011では、10本のレポートを書きました。

 何回かに分けて、その記事を紹介していきたいと思います。


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西川善司の3Dゲームファンのためのグラフィックス講座
台頭するDirectCompute技術
DICEは「Battlefield 3」向けにDirectComputeベースのハイブリッドレンダリングエンジンを発表
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http://game.watch.impress.co.jp/docs/series/3dcg/20110301_430375.html

 毎年恒例の「Advanced Visual Effects with DirectX」セッションではDirectX関連のトレンド技術や最新技術が紹介されましたが、テッセレーションの話題には一区切り付いた感じで、今年はDirectComputeに関する発表が目立っていたように思えます。

 物理シミュレーションをDirectComputeで…と言う模範的な話題もありましたが、EA DICEのような先進的な技術を持つスタジオが、DirectComputeを駆使したハイブリッドレンダリングを実装するなど、DirectComputeを"あえてレンダリングに応用する"活用形態が注目を集めていました。

 DirectX12に関する話題はなく、思いの他、DirectX11時代は長期化しそうです。


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西川善司の3Dゲームファンのためのグラフィックス講座
GPUで物理シミュレーションを実装する方法
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http://game.watch.impress.co.jp/docs/series/3dcg/20110302_430691.html

 DirectComputeを用いてGPUベースで動作する物理シミュレーションに力を入れているのはNVIDIAよりは、むしろAMDの方です。

 というのもNVIDIAは、CUDAベースで動作するPhysXの普及に注力していますから(DirectCompute自体はNVIDIA GPUで動作するものの)、ことに物理シミュレーション…と言うことに話が限定されると、NVIDIAは、これをあまりDirectComputeでやりたがらないのです。

 また、NVIDIA PhysX自体は、なかなか優秀なので、これをデファクトスタンダード的に活用しているスタジオも多くなってきています。

 なので「物理シミュレーションをわざわざDirectComputeで実装する」…といったことは、技術力のあるスタジオがあえて挑戦するか、またはAMD頼み…という感じになってきています。

 ちなみに、オープン規格の物理シミュレーションエンジンのBulletはAMDなどが中心になってDirectComputeベースでの実装が行われていまして、最新3Dベンチマークソフト「3DMark11」に用いられているのはまさにこれです。


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西川善司の3Dゲームファンのためのグラフィックス講座【GDC特別編】
今さら聞けないNGPスペック講座
そのスペックは携帯ゲーム機としての新しい遊びを訴求するためのもの
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http://game.watch.impress.co.jp/docs/series/3dcg/20110304_430907.html

 GDCでは次世代PSPこと「NGP」に関するセッションがいくつかあり、どのセッションも聴講者は満員に近い状態でした。

 セッションを執り行ったSCEアメリカは、過度に期待されるNGPのパフォーマンスについてやんわりと否定し「PS3並のパフォーマンスになることはない」と強調していました。それよりもむしろ新しい携帯ゲーム機によるゲーム体験の方に期待して欲しい…と言うことを訴えていました。

 上の写真はセッション中にデモされたNGPを用いてできる新しいゲームの形の1つ、拡張現実(AR)型ゲームのテクニカルデモの1シーンです。

 ちなみに、サードパーティによるタイトル開発はもう当たり前ですが進行しており、現地で集めた情報によれば、「CPUのパフォーマンス文句はないもののGPUのパフォーマンス不足に悩まされている」という感想を漏らしているスタジオが多かったです。

 みなさん、特にGPUの半透明のパフォーマンスに苦労されているようです。

 でも、最終的には、独自の工夫でなんとかしちゃうはずですので、日本のスタジオの技術力に期待しちゃいましょう。日本のスタジオは、性能に足かせがあるハードの方が燃えるんです(笑)

 NGPに採用されたGPUはImagination Technologies社のPowerVR5の「SGX543MP4+」ですが、実は同社はこのタイミングで新しいGPU、PowerVR6を発表しました。

 PS3の時は、ソニーがNVIDIA GeForce7800を採用した直後に、NVIDIAはGeForce 8800GTXを発表しましたし、ソニーハードはここのところGPUに限っては一世代前のものを掴み(掴まされ?)がちなんですよね…。

 まあNGPに関してはコスト重視のために"あえて"現行PowerVR5を選択した感じがしないでもないですけど。
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Comments

むっちー | 2011/04/22 01:39
PowerVR5って現行製品だったんですね、商品の企画の話すら聞いたことがないので"現行"世代だとは思いませんでした^^;

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