仮想現実から階層現実へ Xbox360ゲーム「Alan Wake」

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 主人公、人気作家アラン・ウェイクは、平和なアメリカ北部の街、ブライトフォールズに、自身のスランプ脱却を目的としたバカンスで訪れます。

 ブライトフォールズはその名の通り美しい田舎町で、妻が手配したという湖畔のコテージも風情があって、最高のシチュエーションです。

 この町の住人は、どこかおかしげですが、アランは大して気に留めず、妻と楽しいひとときを過ごすことに集中することにしたのです。

 しかし、妻がこの町を選んだのはクリエイター専門の心療内科があったからなのでした。

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 最初の晩にこのことを打ち明けられ、ドクターに診てもらうように勧められ、機嫌を損ねたアランは妻と口論に陥ってしまいます。

 コテージの庭先で呆然としていると、突然、コテージの方から悲鳴が聞こえてきます。

 コテージ内に駆け戻ったアランは、全ての部屋を開けていきますが、どの部屋にも妻の姿はなく、崖に張り出した二階のベランダの手すりが折れているのを発見します。

 ベランダの目下には、深い黒ずんだ湖の湖底が蠢いていましたが、アランは妻が落ちたと思い込み、無我夢中に飛び込むのでした。

 目覚めるとそこはベッドの上でした。

 目の前には、クリエイター専門の心療内科のドクターが偽善者っぽい笑顔で自分をなだめてきます。そして、妻は一週間も前に死んだこと、アランはそのことで半狂乱となり、その後、ここで一週間治療を受けていることを知らされるのです。

 そして不気味な笑みを診せるドクターは、アランに今書いている途中の小説の完成を促します。

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 アランは、根拠はありませんが、妻は生きていると確信しており、この現状こそが幻想であると自分に言い聞かせ、単身、妻捜しの謎解きに乗り出すのでした。

 …と、まあ、Alan Wakeは、こんな感じの極上のサイコスリラー・シチュエーションで展開するアドベンチャーゲームです。

 開発はベンチマークソフト「3DMark」シリーズの開発元REMEDY ENTERTAINMENT!
 そのため、エピックスケールで描かれるブライトフォールズの街や森はXbox360最高峰の表現になっています。アクション・アドベンチャーですが、それほど行ったり来たりはなく、基本的にはゴールを目指す方式のゲームです。



 ゲームは通常版と限定版のパッケージがリリースされていますが、この入り組んだ物語を解説してくれる冊子の付いた限定版がオススメです。

 さて、このタイプの脳内記憶もの、仮想現実の階層構造サスペンスとしてはオススメの映画があります。



 1つはジョニー・デップ主演の「シークレットウィンドウ」ですね。
 スランプに陥っている作家ジョニー・デップが田舎町で療養中に、「お前の作品はオレの盗作だ」と言い寄ってきた地元の男と遭遇してから、その後、小説の内容と現実が区別が付かなくなっていく…という超常現象展開はAlan Wakeとそっくりです。
 Alan Wakeの前に見ても、後に見ても楽しめると思います。



 2つ目はジョン・キューザック主演の「アイデンティティ」です。
 土砂降りの豪雨の中、職業も性別も年齢も違う人物達がモーテルに雨宿り宿泊にやってきます。しかし、また1人また1人と殺されていき、必ずその死体には番号のついた鍵を握らされているのでした。犯人はモーテルの宿泊客内にいるに違いないと確信したジョン・キューザックは捜査に乗り出しますが、ちょっと目を離すと死体が消えてしまうのです。
 一見、殺人事件モノっぽい展開で始まりますが、だんだんと超常現象が巻き起こっていき、生き残ったモーテルの人間達はここが現実世界ではないのではないか…と疑い始めます。
 これは、結末のまとめ方が美しいのでオススメです。



 3つ目は「13F」です。
 現在から程なく近い近未来、あるソフトウェア会社が、バーチャルリアリティとして1937年代のロサンゼルスを再現しました。加入者は、自分自身がアバターとなって、この古き良き時代でのバーチャル生活を楽しむことができます。しかし、このプロジェクトのリーダーがある日殺されてしまい、気がつくとその部下の主人公は血だらけのシャツを着ていたのでした。犯人は自分ではないと信じたいのですが、記憶がありません。
 殺されたリーダーは殺される直前に1937年のバーチャルワールドにアクセスをしていることがログから判明します。事件の真相はここにあると睨んだ主人公は現実世界の殺人事件をバーチャルワールドで行うという驚くべき行動に出ます。
 しかし、視聴者は、次第にある違和感を覚え始めるはずです。
 そもそも、主人公が存在している"現在"の"現実世界"の様子も何かおかしいのです。
 この作品は、ゲーム開発者とかエミュレーターとかのコーディングをしている人に見て欲しいですね。
 この映画は、エミュレーターで動いているゲームソフトの気持ちが一人称で味わえる傑作です。
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