「ポピュラス・ザ・ビギニング」開発者インタビュー
「ポピュラス・ザ・ビギニング」の攻略本が99年6月25日についに発売されました。
書店で見かけたら是非見てみてください。
以下はページ数の制約で掲載できなかった開発者インタビューの内容です。
■プロデューサー スチュアート・ホワイト
「ポピュラス ザ・ビギニング公式ガイド」(232ページ/定価1800円)
ソフトバンクパブリッシング刊 ISBN4-7973-0876-1 C0076 ¥1800E |
●Populous: The Beginningでは、どんな仕事をしましたか。
私はプロデューサーで、走り回ってみんなをせっついたり、スケジュールを立てたりしました。
●いちばん満足を感じているのは、どんなことですか。
やり終えたことですね。最後にゲームがすっかり出来上がったのを見るのはすばらしい気分です。最初の批評が出てくきたとき、社外の人も気に入ったと知って、最高でした。
●始めは、なにが難しかったのでしょうか。
どんなものを作るか決めることです。様々なアイディアがありましたからね。どれにするか決めるのは難しいことでしたよ。
結局、たくさんのバージョンのポピュラスのプロトタイプをプログラムしました。エンジン部やコントロール方式を変えていくつものプロトタイプを作り、それからいいとこ取りをしたわけです。
●ゲームを作るには、どのような段階を踏むのですか。
それだけで、本が一冊書けますよ!
基本的には、プロトタイプと調査研究の段階、開発、PR、それから仕上げの各段階です。
しかし、残念ながら、そうすっきりとは分けられないのが現実です。調査研究と、AIやネットワークプレイ、3Dグラフィックスなどのテクノロジーの研究開発は、開発の全段階にわたって苦労させられました。
●ブルフロッグ社のどこが気に入っていますか。
最高の仕事場です。クリエイティブで才能のある人たちが、すばらしいゲームを作っていますから。
■チーフプログラマー アラン・ライト
●Populous: The Beginningでは、どんな仕事をしましたか。
チーフプログラマーでした。
●いちばん満足を感じているのは、どんなことですか。
ゲーム環境全体のユニークな感覚です。具体的には、カーブした水平線を動かすエンジン、リアルタイムの地形レンダリング、リアルな地形モーフィング効果、ゲームに登場するすべての要素におけるインタラクティブ性、AIなどですね。
●始めは、なにが難しかったのでしょうか。
これまでのPopulousにも、その後のフルフロッグのゲームにも負けないような作品をデザインすることでした。それと同時にプレイしやすくて、ハマリやすく、病みつきになりそうなゲームにしなければならないという点もね。
●ゲームを作るには、どのような段階を踏むのですか。
進化論的なアプローチでいくんです。まず、ゲームにぜひ使いたいアイデアを考え、それをプログラミングしてみてうまく働くかどうか見て評価し、それらのアイディアをどんどん取捨選択していくわけです。ダメなアイデアが別のいいアイデアを生み出してくれることもありました。
●ブルフロッグ社のどこが気に入っていますか。
「オリジナリティとクリエイティブマインドに溢れている」と評価され続けているゲーム会社で仕事ができてうれしいです。それにこの素晴らしいゲームの開発チームの一員として貢献できたこともうれしいです。
■AIプログラマー ゲイリー・ステッド
●Populous: The Beginningでは、どんな仕事をしましたか。
本来はAIプログラマーです。しかし他のプログラマー達と同じく、なんでもやりましたよ。
●いちばん満足を感じているのは、どんなことですか。
2つあります。
一つ目ですが、ワールドビューは、ゲームエンジンをいじりまわしているうちに生まれました。初めからあのようなビューを計画したわけではなかったんですよ。
二つ目は、レベルデザイナーたちが作った素晴らしいレベルとそのAIデザインの数々です。実にプログラムのやりがいがありましたね。
●始めは、なにが難しかったのでしょうか。
どのゲームでもそうですが、コンセプトをプログラムにして,プレイと修正を繰り返し、バランスを整えていきます。全体が見通せるようになるまで、多くのデザインは仮のままにしておき、あるとき突然大幅な変更をしたりすることもあるんですよ。
コンピュータ側の思考ルーチンを作るのも、これに似ていて、人間がプレイするゲームの進行を追いかけ、その局面局面に対応していくようにプログラムしていきます。
開発の途中段階で発生するこうした仕様変更はレベルデザイナーに負担をかけてしまい、さらにシングルプレイヤーゲーム全体のテストが遅れることにも繋がるんです。
●ゲームを作るには、どのような段階を踏むのですか。
開発の前半はチームのメンバーが使うツール作り、それにゲームエンジンや作りたい世界をいろいろ試作します。ゲームデザインの多くの部分は紙の上ではなく、ゲームのプロトタイプをいじりまわしてみるこの段階から生まれるんです。
次にゲームの形ができてくると、細かいところに気を配り、アイデアを洗練させます。AIシステムについては、コンピュータプレイヤーを何通りもプログラムしました。ポピュラスではゲーム進行に応じて、アルゴリズムを変えていくようなAIを採用しているんです。
開発がさらに進行すると、いくつかあったアイディアが最終的に1つに収束します。
プロジェクトの最終段階は、チューニングとゲームバランス調整です。この段階がいちばん気を使う段階で、ここで発生する変更がゲームデザイン全体を破壊してしまわないように気を付けなければなりません。
●ブルフロッグ社のどこが気に入っていますか。
金曜日の午後に食料と飲み物を無料でもらえるし、Tシャツもほしいだけただでもらえます。だから外に出て、買い物しなくてすむんですよ。
■チーフアーティスト スティーブ・レニー
●Populous: The Beginningでは、どんな仕事をしましたか。
チーフアーティストとして、アートのスタイルに一貫性を持たせること、それとアートチームの管理です。もちろん、自分でも描きました。
●いちばん満足を感じているのは、どんなことですか。
プロジェクトがかなり進んでから参加したので、おもしろいことはほとんど終わっていたんです。だからプロジェクト内で残った、誰もやりたがらない小さな仕事ばかりやらされました(笑)。
●始めは、なにが難しかったのでしょうか。
なにを変更する必要があるのかを判断すること、それをやる時間を見つけることですね(笑)。
●ゲームを作るには、どのような段階を踏むのですか。
初めはアーティスト達で会議を繰り返し、スケッチや模型を作ってビジュアルスタイルと初期のレイアウトを決めました。しかしビジュアルスタイルは開発中に育って行くもので、良いアイデアがでれば変更されることもあるんです。
実際の仕事は絵を描くのとほぼ同じような感じです。ゲーム全体の要素から手を付けていき、それがいいか悪いかを判断しながら先へ進んでいきます。ある時点まで進んで満足すれば、今度は細部を仕上げていき、最終的には十分時間をかけてデザインに磨きをかけて完成させます。
もちろんいつもこう進むわけではなく、プログラム側の完成待ちで何もできない時間もたくさんあります。そんな時はちょっとだけプログラマーをせかしたりしますよ。
●ブルフロッグ社のどこが気に入っていますか。
ブルフロッグは質の高い斬新なゲームを作るメーカーとして有名で、実際いつもその名声を大切にしています。世界一のゲームを作りたい私にとって、このネームバリューは重要なんです!(笑)
■プロデューサー補佐 ピート・ブロー
●Populous: The Beginningでは、どんな仕事をしましたか。
ゲームプロジェクトが始まった頃はオリジナルレベルのデザインが担当でしたが、その後プロデューサー補佐になりました。
デザインチームではPRやマーケティング、ローカライゼーションなどをたくさんやりましたし、CD-ROMもたくさん焼きましたよ(笑)。それとフロントエンドの機能設計もしました。
●いちばん満足を感じているのは、どんなことですか。
私が知る限り、リアルタイムストラテジーゲームで全方位視点のマップを採用しているのはこのゲームが世界初です。すごいと思いません?(笑)
●始めは、なにが難しかったのでしょうか。
ゲームのインターフェースの部分がいつもキーポイントになります。実際、その変更回数は驚くべきものでした。でもその甲斐はあったと思っています。今回で学んだことはこの先のゲームでも活かせると思っています。
エディタの開発も極めて重要ですね。良いエディタがなければ、良いレベルはデザインできませんからね。各レベルを見てもらえればわかると思いますが、私たちはすばらしいエディタが使えました。
●ゲームを作るには、どのような段階を踏むのですか。
新しいアイデアの採用を決めるまでには、相当量のテストを行います。今日、つまらないアイデアと思えたものでも、新しい要素が追加されたことですばらしいアイディアに生まれ変わるかもしれませんからね。
明確に定められた段階というものは、試行錯誤の上ほとんどの原案が煮詰まってから最後に介入してきます。
そのあとは大変です。PR、マーケティング、ローカライゼーション、デモがありますからね。
●ブルフロッグ社のどこが気に入っていますか。
ゲームに夢中な人がたくさんいます。ゲーム命なんですよ。そしてみんなが新しいアイデアを出す才能を持っていますね。何人かではなく、全員が全員、みんながです。これは珍しいことではないでしょうか。
■チーフテスター ウェイン・フロスト
●Populous: The Beginningでは、どんな仕事をしましたか。
QA(品質保証)を担当しました。
具体的にはテストとそのスケジューリング、管理をやり、テストチームからQA部門へのフィードバックの流れの管理などです。
たいへんな仕事ですが、だれかがやらねばならないので(笑)。
●いちばん満足を感じているのは、どんなことですか。
ゲーム全体の品質向上に貢献できたと思っています。
シングルプレイヤー、マルチプレイヤー、Direct3D、グラフィックス、サウンド、レベル、AIなど…あらゆる面で、安定性とゲームバランスを保つためにデザインチームと協力したつもりです。
それにしても今回のゲームの開発でチームメンバーから学んだことはたくさんありましたね。
●始めは、なにが難しかったのでしょうか。
私から見て初め難しかったのは、ポピュラスというゲームを現在のように直感的にプレイできるようにすることでした。
QAの役目は消費者の立場となることで、テスター達のテスト結果を建設的に開発部門に返すことです。初期段階のこうしたフィードバックは貴重な情報として開発チームに受け入れられ、ゲームを今の姿にする助けになりました。
●ゲームを作るには、どのような段階を踏むのですか。
ゲームのテストの過程は単純なものです。
我々は2つの面で、開発チームに協力しました。
1つはバグ出しです。プログラマーが修正できるように、バグを追求し再現させてデータを提供するんです。
もう1つはテストプレイです。様々な見地からインターフェースやゲームバランスを調べ、最高のゲームができるように努力しました。
●ブルフロッグ社のどこが気に入っていますか。
ブルフロッグには信じられないほど才能豊かな人達がいますよ。
ここで仕事をしていると、なんだか仕事をしている感じがしないときがあるんです。そのせいか、たくさんの同僚と親友になってしまいました。
こういう雰囲気はみんなを楽しくさせてくれるし、なにより能率も上がります。
ゲーム開発に携わって一番うれしいことっていうのは、あんなに開発に苦労したゲームが店に並ぶ瞬間です。店頭にポピュラスが並んでいるのを見るのがすごく待ち遠しいです。