8/2 ビデオカードの話

 ビデオカードの話…といっても描画速度については各パソコン誌で語り尽くされているので今更どうこういっても新鮮味はないと思う。…けどあえていうとすれば,今のところ最速&最高のゲーマー向けビデオカードはMillenniumG400MAXです。すごいカードです。マジで。

 さて。で,何を話そうかというと,それはテレビ出力の画質の話。

 最近のビデオカードには高確率でテレビ出力端子…具体的にはS端子とか,コンポジット端子などの端子が付いている。これはいうまでもなく家庭用テレビへPC画像を出力するためのものだ。

 最近はDVDROMドライブも安くなってきたし,CPUパワーが300MHz程度あればソフトウェアDVDプレイヤーでDVDビデオも楽しめる。ただし,PCディスプレイの画面サイズは小さいので,是非とも大画面の家庭用テレビに映してみたい。…という場合にも役立つのがこのビデオカードのテレビ出力機能だ。

 多くのパソコン誌でビデオカードのテストが行われているが,ほとんどこの機能の品質に目を向けられたことがなかった。

 「実際どの程度なんだろう」という興味は私自身も持っていたのだが,テストする機会もなかったし,そう積極的に調べる気力も起こらなかったのでほったらかしにしていたのだが,つい,先日その機会を得た。

 8月15日発売号のDOS/V magazineでPC-DVD環境構築の記事執筆をした際に,

    MATROX Millennium G400(DUAL HEAD)

    3Dfx Voodoo3 3000

    Leadtek WinFast 3D S320UULTRA(RIVA TNT2)

の3枚のテレビ出力機能付きビデオカードを借り受けたのだ。

 実際にプロフィールプロとSケーブルで接続してみたのだが,Voodoo3とS320Uは画質がひどいひどい。うんざりするくらいひどい。ほんとうにおまけ機能といった感じ。

 一方,すごかったのが,G400(DualHead)。DualHeadの2ndVGA端子には,ビデオ出力機能がついており,DirectShow(だとおもうけど)を使ったオーバーレイ表示のウィンドウのみをここから出力できるのだ。この画質が非常にいいのである。

 にじみはないし,色味もいい感じだ。もちろんテレビなのでインターレースだが解像度は高い。WinDVDで再生した映像をテレビ出力すると民生用DVDプレイヤーで再生したのと同等の画が出てくるのだ。

 G400はもちろん,PC画面全体をテレビ出力できるのだが,この機能で表示したほうがDVDビデオの映像はきれいだった。

 …というわけで,テレビ出力機能を重視するならばG400DualHeadでキマリです。

 G400MAXはデフォルトでDualHeadなので,ゲームにしろDVDにしろとにかくビデオカードはG400MAX買えばいいってことですな。高いけど。

 私は金がないので当分TNT1で頑張ります。

8/10 ランプ交換の話

 反射型液晶プロジェクタ,ビクター「DLA-G10」のランプ交換を行った。

 プロジェクタのランプというのは公称値の明るさから徐々に減衰していき,大体半分以下の輝度になった時点を寿命としているメーカーが多い。DLA-G10の場合は1000時間が寿命となっており,実際1000時間を超えると若干暗い感じがするが,もともとの明るさが1000ANSIルーメンあるため,仮に半分の輝度になったとしても500ANSIルーメン。エントリクラスのプロジェクタにはまだ600ANSIルーメンクラスの製品もあるくらいなので部屋さえ暗くしてしまえば,これでもまだまだ使える。

 っていうことでずうっと使い続け,メーカー公称値1000時間のランプを2000時間も使ったのだった。ところか,さすがに暗くなってきたため,交換に踏み切ることにしたわけ。

 念のためにいっておくと,プロジェクタのランプは電球のようにある日,突然切れてしまうようなことはない。

 DLA-G10の場合はキセノンガスを使ったランプだが,放電発光現象で光らせているので,原理的には蛍光灯のようなものだ。徐々に暗くなって,そのうち点滅しだしたり,点かなくなるという一生だ。暗くなってくるにつれて,電源が入りにくくなってくるのも蛍光灯と似ている。

 「ランプなんてケチらないで交換しなよ」と言われてしまいそうだが,蛍光灯とは違いべらぼうに高いのだ。DLA-G10の場合は400Wのキセノンランプを使用するが,これは定価で99,800円する。毎年気軽に買えるものではない。一大決心で購入に踏み切ったのだ。

 「プロジェクタはインチ単価の一番安いディスプレイである」というのが持論なのだが,実は「ランニングコストは高い」というパラドクスが陰に潜んでいたりするのである。

8/12 謎の物体の話

Nisedora.jpg (19361 バイト) 朝日新聞のとあるスーパーのチラシにこんな画が載っていた。

 何となく面影があるだけにイヤラシイ画だ。ゲラゲラ。

 このスーパーの過去のチラシに掲載された名作パクリキャラ達の画像も見たい人はここをどーぞ。

 うーん,イカチュウは無敵すぎる…。

 

 

 

 

 

 

 

8/21 画の出るレコードの話

Enoderu.jpg (16679 バイト)
「画の出るレコードを開発せよ!」(神尾健三著,草思社,1600円,ISBN4-7942-0603-8)

 MPEG2関連のリサーチをしていて図書館で偶然見つけて適当に借りてきた本だったが,結構面白かった。

 タイトルの「画の出るレコードを開発せよ!」から察するとおり,ビデオディスクの開発物語だ。

 著者は,実際に松下電器に身を置き,ビデオディスク開発に携わった人物だ(既に退社)。この本では,自分たちの技術に入れ込んだ各メーカーの開発者達が「規格化」という嵐の中で翻弄された姿が語られている。登場人物は全て実在のもの,あの松下電器の創始者松下幸之助もたびたび登場する。

(ここからは多少あらすじをしゃべってしまうことになるので自分で読みたい人は読み飛ばすように。)

 勉強不足で知らなかったのだが,ビデオディスク(画の出るレコード)の開発は1960年代から始まっていたそうだ。一番早くから開発をはじめたのはカラーテレビを発明したアメリカのRCA社。続いて,松下電器,ビクター,フィリップス,パイオニアといったメーカーが開発を開始する。

 松下幸之助もこの分野にはかなり前から関心があったようで,アメリカのRCA社に遅れること数年後,自らの指揮で松下電器とビクター(松下の資本が入っているため)に開発を命じたようだ。で,生まれるべくして生まれちゃったのが2つの規格。ご存じビクターの過去の汚点,VHD,そして結局世には出なかったVISCという方式。松下電器自身が開発したVISCを捨て,なぜ子会社(といっておく)のビクターが作ったものを取ったのかが,本では語られている。なんと最終決断を下したのは松下幸之助自身だったようだ。商売の天才と謳われる松下幸之助も「両方捨てた方がよかった」という英断は下せなかったみたい。あっはっは。

 RCAは1981年には20年の歳月と数億ドルの研究費で開発したCEDというビデオディスクを発売,続いて1982年にパイオニアが,フィリップスの開発したVLP方式を改良したLD(レーザーディスク)を発売,1983年,一番最後にビクター,松下陣営がVHDを発表する。

 CEDは機械圧電方式,VHDは静電容量方式というトラッキング手法の違いはあるもののLPレコードプレイヤーと同じように針を円盤に接触させる方式だ。映像のような高周波数で記録した信号を物理接触式で,しかも「針」で読み出そうというアグレッシブマインドには感服するが,今から見ればかなりクレージーな発想だ。円盤はLPレコードの何倍もの,すごい回転速度で回さなきゃだし,そうなれば針の受ける摩擦だってすごい。塵にあたったときの針が受ける衝撃もすごいわけで,吹っ飛んだヘッドはどこか別のトラックに飛んでいって再生しちゃうし,LPレコードみたいに同じ所を永久に再生し続けることだってあるだろう。スロー再生,早送り,早逆送りなんてやったら針が悲鳴を上げるだろう。

 だが,この方式のクレージーさには当時の技術者も薄々気づいていたらしい。ところが,RCAはカラーテレビの開発費を上回る予算と月日を掛けて研究しちゃったし,松下もビクターも松下幸之助の命を受けちゃって開発したものだし,引っ込められなかったようなんだよなぁ。

 本の中でも語られているけど,LDの原型を作ったフィリップスが,松下やビクターの技術者の前で,指紋をべっとり付けたLDとVHDを再生して「映像の乱れ具合」を調べる公開デモをやったそうだ。結果は,想像通り,VHDは映像がグチャグチャ,LDは平然と再生…という感じだったのだが,この実験を目の前でやられても松下やビクターは自社の方式の負けを認めなかったんだと。

 ちなみに,20世紀の最大の「文明の象徴」ともいえるカラーテレビを発明したRCAは,結局CED事業に失敗して首が回らなくなってGEに吸収されて消滅しちゃう。「社運をかける」ってよくいうけど,これはまさに絵に描いたような失敗例ってわけだな。

 ここで笑っちゃうのが,この,原理的にどう見てもダメダメ方式のビクター,松下のVHDグループに,東芝,シャープ,三洋,三菱っていう名だたる企業も参入して来ちゃうんだよね。これって各社はなーんも考えずに「巨人=松下がやってるからだいじょぶじゃろー」ってことでやってきちゃったんだろうな。あるいは政治的な理由かなんかか。

 結局,教訓として思いつくのは「世の中に出てくる製品のなかにはそのメーカーすらも自信が持てないものもある」ってことなんだよなぁ。もう消えたけどピピンとかもそうだったにちがいない

 VHD陣営は最終的には13社の同盟を得て,VHD vs LDのスコアは13対1。パイオニアのLDは孤立状態。

 んで,このビデオディスク戦争のとき,もう一人の巨人,ソニーは何やってたかというとフィリップスとCDをやってたのよね。だからほとんど傍観者の立場。さらにもう一人巨漢,日立は何やってたかというと,「VHDに入ろうかやめよか,考えちゅー」と唄いながらも,結局RCAのCEDに手を染め,玉砕している。

 CDは世の中に浸透して行き,同じ非接触の光方式という共通項を応用してできたCD/LDのコンパチプレイヤーが決定打となり,結局ビデオディスク戦争で生き残ったのはLDだった。

 まさにパイオニアは9回の裏に13対1を逆転サヨナラホームランでひっくり返したわけだよなぁ。

 でも,例えばどうなんだろう。

 CDはもちろんのこと,LDやCEDよりも早くVHDが発売されていて,同じ接触型,針方式ってことで,もしLPレコードが高音質で再生できるVHDプレイヤーが出ていたとしたら…。歴史は変わったかも。(ちなみにビクターはAHDというVHDのオーディオバージョンまで出そうとしていたようだが…)

 この本では,βマックスvsVHSのビデオデッキ戦争の舞台裏についても触れていたりする。

 そのうち,今の混沌としたDVDファミリーやデジタルVTRのフォーマット戦争の裏を語った本も出てくるかもね。

 

 

 

 


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